2016年05月08日 (日)

サラリーマン減税 |スーツやキャバクラ代 自腹の救済拡大?!特定支出控除の使い勝手

平成24年改正によって、
サラリーマン(給与所得の人)でも、事業者みたいに「経費」が使えるようになりました。
「経費」は自営業者のためにある特権でしたが、それをサラリーマンにも一部認めましょう。
という改正です。
この度はこちらを解説して参ります。

1. 実は、ずっと昔からある「サラリーマンのみなし経費」

世の中には、好きに経費を使える「事業者」と、好きに経費を使えない「サラリーマン」という2つのタイプの働き方があります。
事業者の経費には「売上を獲得するのにかかった投資コスト」が全て含まれます。
会社名義の車、書籍代、交際費なんかは投資コストとして「経費」に含めることができていました。

一方、サラリーマンであっても、自営業者の経費と同様に、会社で働くためには、スーツやら、諸々の間接的なコストが必要になってきます。
サラリーマンにも、給与金額に比例して20%~40%程度、一律の「経費」を認めています。
これを「給与所得控除」と言います。
このサラリーマンの「みなし経費」(正式名称は、「給与所得控除」といいます。)はずーっと前からあります。

サラリーマンのみなし経費は、下記の算式によって求めます。
サラリーマンの平均年収は446万円(平均33歳)だそうですが、
446万円×20%+54万円=143万円をみなし経費として、
所得税の計算から除外します。
給与所得控除H28

https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1410.htm
所得税の対象は、446万円-143万円=302万円となります。
つまり、446万円の年収があっても、諸々の諸経費分を143万円として、
全国民一律に定めて、302万円だけに所得税を掛けましょう。という制度になっています。

なので、今までの制度でも、「給与所得控除」によって、
サラリーマンでも実は経費見合いの分は税務上優遇?されていました。

2.自営業者の特権?!「経費」をサラリーマンにも認めます!

H24年の税制改正の「特定支出控除」というのは、
このサラリーマンの「みなし経費」を拡大して「みなし経費 その2」を認めますよ。
という改正になります。

サラリーマンの個別個別の事情を考えたら、税務署の事務処理がパンクしてしまう
というところを深堀してみますと、
「課税の公平」を考えると、給与金額に比例して一律になんてせずに、もっと個別個別の事情を考えるべきなのです。

例えば、AさんとBさんが居て、資格取得に熱心なAさんはお金がかかります。
銀行員さんとかは、FPやらなんやら、最新の知識が必要ですし、
勤務弁護士やら勤務会計士も知識のキャッチアップが必要になってきます。
最近では社内公用語を英語にするような会社も出てきました。
英語を使えなければ昇進できない環境にいるAさんと、
ドメスティック畑一本のBさんは、使うお金が違います。

サラリーマンを事業者と考えると、
英語を使えないと仕事にならないという状況では、
この「英語を身に付けるスキル」というのは、もはや経費でしょ!
ということになってきます。

ここでも格差が広がってきてる感じです。

こんな状況において、個別事情を考えたら、税務署の事務処理が大変なことになる・・・
なんて言ってられないんです。
そこで、税務署は、「いやいや分かりました。仰るとおりです。僕ら頑張ります。」ということで、
改正がなされました。


3.どこまでの経費が許されるのか?境界線…

「分かりました」
とにかくまるっというと、経費の幅が広くなったんですね。
マスコミ等によると、経費には、「スーツ」や「資格取得費用」が含まれるって聞いたんですが、どこまで含まれるんでしょうか?
最近は、ユニクロとか、社内公用語を英語にしてる会社があるそうですけど、
ベルリッツみたいな英語学校に通った場合の費用って認められるのでしょうか?
具体的な範囲を知りたいですね。

さて、国税庁のタックスアンサーに
国税庁個人課税課の方が作ったギャグみたいなQ&Aが列挙されています。
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/120912/index.htm

Q6:I-padで電子書籍読んでて、電子書籍は仕事に必要なんですけど、I-pad本体は特定支出に含まれますか?
A6:本体購入価格は含まれません(笑)。
Q11:うちの会社はカジュアルウェアでOKなんですが、シャツとかジーンズ(ユニクロ)は特定支出に入るんですか?
A11:入りません。
(それってスーツはOKだけど、カジュアルは認めないっていう 個人的な偏見やん)
Q5:アカウンティングスクールの費用は入りますか?
A5:アカスクは会計士の短答が一部免除されるだけだからダメ!関係ない!!
←もはや卒業しても合格率XX%と制度崩壊しつつあるロースクールの費用はOK??なぜ?
と、個人課税課の方の個人的見解では???とはてなが多い文章になっています。

一方、Q&Aの中で、大事そうなものはこちらです。
・費用の認識は、現金主義でなく発生主義(Q1)
・教育訓練給付の補填金額は控除しなくてOK(Q3)

うだうだとよくもこんなに書いたねぇ~というアホなQ&Aの中で大事なことは、
「要件:給与支払者が承認すること」というこの一文にあると考えます。
とにかく、個人に任せるとなんでもぶっこんで来て、細かくてメンドクサイから、
「給与支払者(つまり雇用主)」の承認っていう一文を突っ込めば、
そんな煩く言わないだろう~っていう、「上司は怖いものだ」という役所のクズみたいな論理が透けて見えます。

さすると、以下は個人的な見解ですが、OKな範囲として、
■社内公用語を英語にしてる会社の英語学習費用
⇒もちろん業務に必要なのでOK
■弁護士、公認会計士、税理士、弁理士などの資格取得費の「など」ってどこまで入る?
⇒そもそも曖昧なので、仕事に関連すると(個人的に)思えば、幅広く解してOK
スポーツジムの費用も「弊社は、ボディービルをブランディングイメージしてます。」っていうことであればOKだと思います。

「コミュニケーション」や、「コーチング」などのセミナーは
業務上必要に含まれるのか?という感じですが、幅広く解釈しても、僕は、大丈夫だと考えます。


4.でも・・・適用を受けるためのメチャクチャハードル高い・・・

マスコミに騒がれて、魅力的な税制、是非とも受けたいものです。。。
でもね、ハードル高いのです。

「集めなきゃいけない領収書がすっげー多額」

この税制を受けるためには、まず、給与所得控除の金額の1/2を超える必要があります。
これがまず難しい・・・
サラリーマンの平均年収は、446万円だそうですが、
年収446万円の場合は、給与所得控除143万円の半分72万円分の領収書を集める必要があります。
この時点で結構ハードル高いんですよね。
だって、住宅ローンやら、教育費やら払ってて、その残りを投資に回すっていうのはどうなんでしょうか?
結婚して子供がいたら、まず無理です。

必要経費②は、主に
A.図書費、衣服費、交際費等を「勤務必要経費」
B.資格取得費用
の2つから構成されています。

なんと A.日常生活で集められる系は、最大65万円までと制限が付されています。
72万円に至るためには、「資格取得費用」が7万円分は、必須な感じです。
ちゃんとB.「資格取得費用」を使わなきゃなりません。

これって、月2万円の英会話教室やら、3万円のTAC簿記講座ごときじゃビクともしません。
かなりまとまった相当なお金を自己投資にかける必要があります。
やっぱり、Q&Aにある崩壊しつつある「ロースクール」でしょうか・・・

5.しかししかし、なんと節税額が微妙だ・・・

驚きの制度ですが、
頑張ってこんなに高いハードルを越えても、節税額も微妙なのです。

「その割に還付が超少ない…」
この高いハードルを越えて、かつ超えた部分の差額分×税率しか還付されません。
先ほどのサラリーマンAくんを例にとりますと、
年収は平均的な446百万円、このうち、80万円を自己投資に突っ込みました。
一点投下です。なんとか73万円のハードルは超えました。

なんとなんと、これで取れる節税額は、(80万円-73万円)×税率 10% =7千円
(この所得水準では、20%に行くか行かないか微妙なところです。)

7千円です。
7千円です。
な、なんと、7千円です。

※税率は所得によって異なります。


6.ターゲットは誰か?

ここまで来ると、もはや誰得だよ?状態です。
政治家とか、税務署とか、国税役人さんが一生懸命一生懸命Q&Aも作って、その結果がこれです。

しかし、税制改正や税制優遇にはターゲットが存在するはずです。
完全に想像ですが、
見えやすい成果が欲しくって「サラリーマン減税」をぶち上げたい政治家がいて、「官邸主導」で導入提案!
おぉ!それは票につながりそうで良いですね!ということで進めたものの、
財務省に伺いを立てたところ、税収が減少する云々…の悶着があり、
厳しーい成約が付けられ、
骨抜きにされた。
こんなところでしょうか…

マスコミ等々で「サラリーマン減税、スーツも交際費も適用可!!」みたいに騒がれている割に・・・です。

では誰がターゲットか?という
①20代~30代前半
②独身(子供いない)
③ロースクールに行ってる(又はガッツリ自己投資してる)
④お小遣い帳をちゃんとつけてる
という二宮金次郎さんみたいな人が想定ターゲットだと思います。

7.無理目なものを突っ込んだ場合の税務リスク=あんまりない

ぶっちゃけ、個人のサラリーマンに税務調査が入る・・・あんまり聞きません。
そもそも個人所得税の中で税務調査をするという中に、
この税制が対象となるようなサラリーマンは含まれていないんです。
残念ながら税務署としては、眼中にありません。

だって、個人課税部門の役人どもはそれなりに忙しいのです。
だったら、どこを狙うか?っていうと、大型案件を狙いますよね。
だって、税務調査してもこれぐらいだったらたかが知れてるから・・・

なので、ドキドキしながら
「ビジネスカジュアルでユニクロの服だけど、これって入れちゃダメかな?」
なんて議論してもしょうがないのです。
結構無理っぽくっても突っ込んでOKです。
ただ…一点、
「会社ぐるみで、やりまくってやるぜ!」と、
マスコミでニュース価値がありそうな面白系のネタをやると
税務署が、見せしめのために、1号をガッツリ厳しめに宣伝する可能性がありますのでご留意ください…

8.まとめ

じゃあ、どうするんだ?っていうことですが…
「まずは、お小遣い帳を付けましょう」という意味不明な提案になってしまいます。
これを付けてないとそもそも適用できません。
強いて言えば、まとめると、こんな感じになります。
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①取りあえず、領収書は集めて、お小遣い帳(資金収支表)を付けましょう。
②「給与支払者が認めれば…」という条件の元、結構幅広い範囲が認められる
③達成するハードルは結構高い割に、頑張って集めまくっても医療費控除と同じぐらいのインパクトしかない
④税務リスクについて=多少無理っぽいものでも突っ込んで大丈夫(だと思います)
⑤税制のターゲット=20代~30代、独身(子供いない)、住宅ローンなし、ロースクール通ってる、お小遣い帳つけてる人
⑥結局、改正されても使い勝手、悪すぎる・・・
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影響額算定シートはこちらになります。
サラリーマン減税 スーツやキャバクラ代 自腹の救済拡大?!特定支出控除判定ツール.xlsx

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