2016年07月04日 (月)

適格合併と繰越欠損金の引き継ぎ要件(セミプロ向け)

最近、しばしば、「赤字の会社を買ってきて、合併させれば、節税ができる!」というご相談を受けますが、
税務上の赤字(繰越欠損)がある会社を買収しても、節税に活用できる場面は、限られています。
いえ、残念ながら、ほとんど封じられています。
今回は、正確性は捨象して、ある程度ざっくり説明して参ります。


 

1.繰越欠損金を引き継げるパターン

いささか乱暴ではありますが、下記のパターンであれば、適格合併時に、税務上の赤字(繰越欠損金)を引き継ぐことができます。

パターン1:本来、1つの組織体で行うことができた事業を あえて分社したが、やっぱりその後合併した場合
パターン2:ガチの対等合併である場合(特定役員要件)
パターン3:被合併法人との 売上/従業員/資本金規模などの「事業規模が大きく乖離していない(概ね20%以内)」場合(事業規模要件)
パターン4:5年以上前から保有(ただし、租税回避目的はアウト)

 

パターン1:本来、1つの組織体で行うことができた事業を あえて分社したが、やっぱりその後合併した場合

新規事業を行う場合、
①同一企業内の別部門として行う場合と、
②100%子会社として新会社を設立する場合の2つがあります。

既存事業は黒字で推移したものの、新規投資は失敗し繰越損失が生じた場合、
ケース①では、新事業の赤字を取り込み、既存事業の黒字と相殺することができます。
一方、
ケース②では、子会社には赤字が生じていますが、既存事業では黒字となります。

ここで、ケース②で、赤字と黒字を相殺できないと、課税上、不公平が生じます。
このため、ケース②の別法人で事業を行っているものの、実態が同一法人である場合の適格合併は、繰越欠損金の引き継ぎを認めています

 

パターン2:対等合併である場合(特定役員要件)

吸収される側の会社の重役が新会社でも重役であるパターンでも繰越欠損の引継ぎを認めています。
重役が続投しているという条件を備えていれば、対等合併であると言え、投資が継続していると言えるからです。
この場合には繰越欠損金を引き継ぐことができます。

しかし、どうでしょうか・・・合併された側の役員が重役として残り続けられるケースは、
実務上は、あまりないように思えます。

 

パターン3:被合併法人との 売上/従業員/資本金規模などの「事業規模が大きく乖離していない(概ね20%以内)」場合(事業規模要件)

事業規模が大きく乖離していないことも「投資が継続している」という要件の1つになっています。
具体的には「概ね」5倍以上、差があるとダメとしています。
例:メガバンク同士の合併 OK
例: メガバンクが信用金庫を買収した NG

法の趣旨は、規模は小さいが、たくさん繰越欠損金がある会社を買収しての節税の防止にあります。

他の条件と比較すると、このパターンは比較的使いやすいように思います。
ただ、本体と比較して20%を超えるようなそれなりの規模の赤字会社を買収するとなると、結構勇気がいりますよね。

 

 

パターン4:5年以上前から保有(ただし、租税回避目的はアウト)

5年以上前から株式を保有している会社の欠損は活用できるルールになっています。
ただし、5年以上前からの休眠会社を計画的に保有しておくというのは、租税回避目的ルールにひっかかりそうです。
ここは見解の相違が出そうなところです。

こちらも他のパターンと比較すると、それなりに使いやすそうです。

 

2.適格合併 という条件

ちょっとプロ向けですが、上記の条件を満たす前に、第一関門として「適格合併」であるという必要があります。
難しいことは省きますが、「税制適格」の本質は、「投資が継続している」というものです。
「適格合併」の場合、資産負債の簿価引き継ぎとなります。

適格合併であり、投資が継続していれば、資産負債は簿価引継ぎができ、
非適格合併であり、投資が継続していなければ、資産負債は時価引継ぎということになります。

 

 

いずれにしても、適格合併であり、かつ、上記4つのパターンのいずれかを満たして、はじめて税務上の赤字(欠損金)を引き継ぐことができます。

 

3.よくある判定フローチャート図

無題

最後までお読みいただきありがとうございました。
ご参考になれば幸いです。

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