2016年06月27日 (月)

銀行融資 | 成長期の社長向け | 「あんなに銀行が『借りてくれ』」と頼んでいたのに、銀行はなぜいきなり「もう貸せません」に転換するのか(怒)?

中小企業の社長様と話している中で、
金融機関から、
今まで「借りてくれ借りてくれ」と頼まれていたのに突然手のひらを返したように冷たくなる…
から信用できない…
と言ったものがあります。
しかしこれは、銀行が冷たいのではなく、支店長のタイプが変わって手のひら返しをしたのでもありません。

これにはあるメカニズムが存在していました。

1.貸し込みのメカニズム

そのメカニズムとは、
『貸し込みをさせる銀行内部の力学』と
『銀行は会社の実情を把握し、与信管理をしているという「社長の」誤解』の 2つです。

2.あるあるストーリー

以下、借入が大きくなるまでの 架空の会社の「あるあるストーリー」を見ていきます。
無題
(ブルーは売上高/業績、オレンジは借入金残高を時系列で表記したものになります。(イメージ図))
一般的に、企業は事業規模の拡大とともに、
創業期⇒成長期⇒成熟期⇒衰退期 と4つのフェーズに分かれ、
多くは、下記のストーリーを描いていきます。

Step1:創業期
Step2:成長期(初期)
Step3:成長期(中期)【借りてくれフェーズ】
Step4:成長期(中~後期)【急拡大の歪みフェーズ】
Step5:成長期(後期~成熟期)【歪みが財務数値となって表れるフェーズ】
Step6:成熟期(中期)【要管理先 / もう貸せませんフェーズ】
Step7:衰退期(中期)【身動き取れないパターン or 回収モードパターン】

以下、詳しくストーリーを描いてみます。

 

Step1:創業期

・ないない尽くしから、ものすごく頑張る
とにかく売上を増やすことに注力する

 

Step2:成長期(初期)

・創業期から脱して、売上が伸びはじめる
追加運転資金(在庫/売掛債権)が必要
・銀行に融資の申し出 = 銀行貸し出しOK!!(ただし通常、保証協会付き)
・資金調達によりさらに売上伸長・・・借入金月商倍率(*1)は低い


*1:借入金月商倍率
借入ができるか否かは、いくつかのポイントがありますが、まずは「借入金と年商の適正比率」が基本になります。
「借入金月商倍率」は、借入金÷月商により求められます。
低ければ低いほど良いという指標です(無借金経営の場合はこれがゼロになります)。
製造業で4-5ヶ月、その他の業種で3-4ヶ月を超えたあたりから徐々に追加融資を受けにくくなります。
借入金が年商の半分を超えると、保証協会付き融資であっても借り入れが困難になります。

 

Step3: 成長期(中期)【借りてくれフェーズ】

銀行と取引関係が構築され(*2)、さらなる事業伸長ために借入を行う。そして売上増加。
売上が伸びればだいたいの問題は解消します。社内は活気があり、経営者としての自信も出てくる。経営者としてのオーラが出てくる。
・銀行が借りてくれとお願いをしてくる(*3)
節税対策投資なんかの話も持ちかけられる(*3)
・借入金月商倍率は徐々に増加するが正常水準


*2:銀行との取引関係構築
初めての取引先との取引は嬉しい反面、貸倒にならないか?というも怖いものです。これは銀行も同じです。
なので、銀行と取引をしたことがある(借りて返した)という実績が作られることで、銀行から借りやすくなります。
*3:投資の話
バブル以後の低金利時代、銀行は収益維持のために必死になっています。
従来の貸出以外にも様々な商品を取り扱っており、ここにもノルマがあります。
「金融商品に協力してください」とお願いさせる。
不幸な事例として、銀行(の担当者)に頼まれ、言われるがままに為替変動デリバティブに手を出し、倒産した会社もあります。
また、なぜか社債を発行させられた会社もあります。

 

 

Step4:成長期(中~後期)【急拡大の歪みフェーズ】

・急拡大するも、社内管理体制が追い付かず滞留債権/在庫発生(*4)
・滞留在庫/債権が表面化していなかったりするので、社内に危機感はあまりない
・しかし、過去の成功体験に捕らわれる 又は滞留が表面化しない。投資継続。(*4)
・歪みは決算書に急には表れない&銀行としても取引があった「安心感」から借入取引は実行可能
・銀行担当者としては、「貸せる相手先」として認識し、貸し込みを行う(*5)


*4:社内管理体制が追い付かない
社長の多くは営業出身であり、社内管理は左腕となる参謀/補佐役が必要となります。
しかし、財務という怖い部分を任せられる信頼できる人物はなかなか見当たりません。
奥さんや親族は、信頼はできますが、能力面で追いつかないケースもあります。
従業員に使い込みをされるという会社も 案外多くあります。

*5:「貸せる相手」
銀行の営業ノルマは厳しい。貸せる相手は限られている。
どうにかこうにか貸したい。お願いに上がる。
爆弾が爆発するまでであれば、貸した方が利益になります。
もっというと、銀行は「(事業で)返せるかどうか?」で貸しているのではなく、「(社内で稟議が通って)貸せるかどうか?」で貸し出しをしているのです。
※「(事業で)返せるかどうか?」と、「(連帯保証や担保で)回収できるか?」とは違います。

 

Step5:成長期(後期~成熟期)【歪みが財務数値となって表れるフェーズ】

滞留債権や滞留在庫が表面化してくるものの、税務上の問題(*6)もあり処理できない
・いくつか投資の失敗が明らかになるものの、銀行借り入れが膨らんでおり、実質的で抜本的な自己解決が難しい
・状況によっては、不良資産を処理すると債務超過になってしまうため、処理したくてもできない
・タイミングによっては貸せる相手でもあるため銀行も邪険にはしない
・社長が想定していたよりも褒められ、「なんだまだ借入できるじゃないか・・・と」安心する(*7)
銀行融資は「借り換え」によりぐるぐる回している(*8)
・借入金の月商倍率はさらに増加(*1)


*6:税務上の問題
会計上、滞留債権/不良在庫や、含み損のある不動産や株式でも、税務上は、「売却する」まで処理することはできません。そして、税務調整をしている中小企業は皆無です。
*7:「なんだ借入できるじゃないか…」
社長が把握している情報と銀行が把握している情報は差があります。
情報に非対称性があります。
『銀行は、会社の実情を細かく把握し、与信管理をしている』ということはありません。結構ザルです。
銀行担当者は200-300社をかけ持っています。
3年周期の頻繁な転勤がありますが、引き継ぎ期間はたったの3日間です。
1社あたりにかけられる時間はせいぜい15分程度です。
この状況で綿密な財務分析をして細かい与信管理は無理です。
なので、情報量は、社長>銀行という構造は当初からあります。
*8:借り換え
借入残高がある程度増えた場合で、不良資産が蓄積されている場合、直ちに借入金の返済は難しい状況になっています。
既存の借入を新規融資で返済する状態が当たり前になってきます。
会社側としても、銀行側としても、抜本的な解決策がない以上、借り換えをする以外に選択肢はない状況になります。

 

Step6:成熟期(中期)【要管理先 / もう貸せませんフェーズ】

経済要因などにより、業績が悪化、社会が不景気だから仕方ない…
・奇しくも売上の減少と重なってしまう・・・借入金の月商倍率が1年を超えてしまう(*1)
・滞留債権や滞留在庫について、厳しい目で決算書を見始める(*9)
リスケで対応するものの、抜本的な解決にならない(*10)
・社長としては、何で急に?ここで銀行に対する「誤解」が表面化(*11)


*9:厳しい目での決算書
情報の非対称性はどこかで爆発してきます。
メインバンクが手を引いていて、結果、取引先の金融機関がたくさんになっている場合もあります。
*10:リスケ

リスケ(reschedule)は、銀行との間の条件変更契約ですが、リスケした状態を正常化するには数年かかるケースがほとんどです。
しかし一方、通常は半年~1年間という短い契約になり、銀行は契約期日が到来する都度、経営改善計画の進捗をチェックして、延長/更新してよいかと判断することになります。
このため、多くの場合、かなり長い間、銀行との交渉で疲弊することになってしまいます。
借り換えを重ねた結果、年商規模まで借入が増大していると、最終的に反永久的にリスケをしなければならないケースも出てきてしまいます。
*11:銀行に対する「誤解」
*7「なんだ借り換えできるじゃないか…」という社長の勘違い同様、銀行との情報の非対称性からくるものですが、ここまで来ると、社長(又は財務担当役員)はいかに資金調達をするかに汲々としています。
知ってはいるものの、資金を絶やされると倒産してしまうため、銀行にお願いをする。
借りさせていただくように、立場が逆になる。

 

Step7:衰退期(中期)【身動き取れないパターン or 回収モードパターン】

(1)身動き取れないパターンの場合

借り換えを続け、会社は存続する。
・事業譲渡(M&A)を考えるものの、担保&保証により、譲渡しても社長の破産は免れない
・根本的な解決は難しいと分かっているものの、生活を考えるとそのまま継続せざるを得ない(*12)
社長の年齢は高齢化している。同時に従業員も高齢化している(*13)。
・従業員もあるので、息子に事業承継させるつもりはあるが、難しい局面であることが分かっているため悩む…(*13)

(2)回収モードパターンの場合

・事業環境が大きく変化してしまい回収モードへ。清算or破産(*14)
担保に入れた社長自宅&連帯保証実行


*12:借り換えを続け事業存続
債務超過になってからのM&Aは、多くの場合、新スポンサーが現れたとしても、会社の借入金と保証をしている社長の債務は免れないケースがほとんどです。
経済的利益の観点からは、社長は借り換えを続け事業を存続することを選択します。
*13:社長と従業員の高齢化と息子への事業承継
悩ましい問題ですが、社長が高齢化すると抜本的な解決が取りにくくなります。
また従業員が高齢化している場合、転職先を見つけるのも難しく、これもまた事業を存続させる理由の1つになります。
会社と息子に愛着があることが理由で、息子への事業承継を考えられているケースもあります。
また息子としても、決算書を見せられていないため「継ぐ気」である心づもりになっているケースがあります。でも言い出せない…
*14:民事再生とか清算とか破産
出直しをするためには、資金が必要になります。破産をするにも資金が必要になります。
事業がうまく行かなくなった場合、感覚的には7割の会社が休眠にする選択をするようです。

 

 

3.まとめ

最後まで成り行きに任せると暗い話になってしまいましたが、
時計の針を戻しますと、どこでボタンが掛け違ったのでしょうか?
私は、
社長は、
①銀行には、厳しい営業ノルマの達成と、頻繁な転勤という『銀行内部の貸し込みをさせる力学』があることを知ること
②『銀行は、会社の実情を細かく把握し、与信管理をしているという誤解』をせずに、銀行に乗せられずに事業計画を作成し、「まじめに」金勘定をすること
の2つがポイントだと思います。

□銀行は、会社の実情を細かく把握し、与信管理をしているという訳ではない(実態かなり「ざる」)
□これは、会社側と銀行側との間に情報格差があるから(仕方ない面がある)
□成長期の頃から、情報格差に対してちゃんと会社側から情報開示をするべきであった
□「メガバンク担当者から借りてくれと頼まれている」からと言って、言われるがままに借入をしてしまうと、数年後にずぶずぶの泥沼にはまって行ってしまう可能性が高い
□銀行の言うことを聞く「良いお客さん」にならないことが必要
□社長は計数管理に強い必要がある
□PLだけじゃなくて、CFやBSを見れるようになるべきだった
□管理部門を馬鹿にしない


 

最後までお読みいただきありがとうございました。
ご参考になれれば幸いです。

関連記事