2015年12月28日 (月)

海外駐在員の給与税務のポイントとよくある誤解

よく御相談を受ける事項に限り論点整理しました。

【基本的な考え方】

まずは個別の論点に入る前に、基本的な考え方からご説明します。

1.「居住地」課税主義

人は、国籍とは別に 所属国=「居住地」を定義する必要があります。
「居住地」=「住民票がある国」と考えて問題ありません。
そして、この「居住地」で、年間に稼いだすべて全ての税金を納めるというのが基本になります。
これを「全世界所得課税」といいます。

2.「源泉地」課税主義(「居住地」課税主義の補正)

1ヵ国だけで生活している場合には上記の考え方で問題にはなりませんが、2国間を行き来している人は居住地以外の国が課税できないことになります。
そこで、「働いた国で納付をする」として居住地課税主義に補正をかけています。
補正は、課税権を有している国=「源泉」((源泉=お金の出る「泉」の「源」という意味))という方法で行っています。
この考え方の根底は、「安心して働けるのは、その国の警察等に守られているから、ショバ代として、その国に税金を納付する。」というものです。
例えば、日本で300日+中国で65日働いた場合、原則、中国に対して65日分の稼働に対してのショバ代を納めるのが筋でしょというものです。

3. 183日ルールなどの租税条約(「源泉地」課税主義の補正)

しかしながら、上記の「源泉地」課税主義をすべての場面で貫くと、
・1日単位でショバ代を計算すると煩雑になる
・徴収税額が、回収コストを上回る 恐れがあります。
そこで、2国間の租税条約で、「お互いに取らない」という協定を結んでいるケースが多くあります。
年間365日の半分183日以内であれば、税金を相互に掛けないという協定を結んでいるのです。


 

まとめると下記のようになります。

無題
現地法人への出向者等への所得税課税

【論点整理】

上記が基本的な考え方ですが、判断に迷う論点がいくつかあります。
代表的なものと、よくある誤解をご紹介します。

1.駐在と出張の選択

海外勤務が183日ルール以内であれば、居住地を日本に残し出張ベースとする選択はあります。
短期滞在者特例は、常駐を前提とする「責任者」には適用できません。
(よくある誤解)
・現地責任者だけれども(or PEを所有)、「出張」扱いにしている → ×
・駐在ビザを取得しているが 「出張」にしている(※ビザの種類に注意) → ×
(ポイント)
住民税は1月1日の1日だけで判定されるため、住民票移動のタイミングにご注意ください。

2.役員の場合

日本又は現地法人で役員の場合、かなり論点が複雑になります。
論点を区切ると下記のようになります。

海外駐在員の給与税務のポイントとよくある誤解_1_2015.12.16

(ポイント)
・役員は 勤務する「場所」に制約されません。
・役員報酬については、必ずしも相手国の課税権を排除するものではありません。二重課税リスクがあります。
・日本本社の役員報酬と、現地子会社報酬/給与の按分は、滞在期間など説明可能な基準で按分すべきという考えになります (国外での滞在期間中は国外で申告、国内勤務期間中かつ対価が日本払いの給与は国内で申告)。
・非居住者の場合、日本の取締役報酬は日本国内源泉所得となります。日本で20%の源泉徴収が必要となります。

3.留守宅手当

■「源泉」=較差補てん(留守宅手当など)は勤務地での課税になります。
海外勤務だが、現地との給与差を補てんするため、日本本社から日本の銀行口座へ振込している。
→「源泉国(海外)」での課税が原則になります。
(考え方)
国内勤務に起因しないため、「源泉」の考え方からは、日本の課税にはならない(海外での課税)
(よくある誤解)
日本国内の源泉と考え、日本での所得税を納め、海外での所得税に含めていないケース → ×

4.寄付金リスク

較差補てん等で、労働を提供した法人(現地子会社)と、対価を支払った法人(日本本社)が別
→架空人件費と認定されるリスク
業務委託契約や、パテント契約などである程度カバーできるが、リスクゼロは難しい

5.個人所得税と法人税

両面注意する必要があります。
法人税=寄付金の論点と似ています。

6.日本での社会保険の継続

従業員本人の希望により、日本での社会保険を継続したいケースがあります。
・場合によっては、寄付金認定される可能性があります。
・税務での申告と社会保険の申告が乖離しても良いとするか?
・従業員の家族が扶養に入れない場合があります(⇒ 自ら入る)。

7.住宅ローン控除

非居住者となった場合、赴任中は使えません。
帰国後に残存期間の控除を受けるためには、下記の書類を提出する必要があります。
「転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書」
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/1620.htm

お読み頂き、ありがとうございました。

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