2015年06月18日 (木)

なぜ 指定暴力団・工藤会に所得税が課せられたのか?/今後の非営利団体運用の注意点

6月16日夜、暴力団に課税されるという衝撃のニュースが流れました。
(以下NHKニュースより引用)
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http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150616/k10010116831000.html
北九州市の特定危険指定暴力団・工藤会が傘下の暴力団員から集めた上納金の一部はトップの個人所得に当たり、およそ8800万円を脱税したとして、
警察は工藤会のトップを所得税法違反の疑いで再逮捕しました。
面会した弁護士によりますと、工藤会のトップは「何で脱税になるのか」と話したということです。
(NHKニュース引用終わり)
(2015/06/18更新)

1.今まで 課税されなかった理由

ニュースの意外性としては、「なぜ今になって課税されたのか?逆に今まで課税できなかったのか?」ということです。

まず、日本の税制は「収益を得たら課税」ということが原則となっています。
しかし、例外として、PTAや町内会、自警団などの会費については、組織運営に使われている限りは課税されない整理となっています。
ここでカギを握るのが、組織の行っている行為が「収益事業」に該当するか否かという点です。
すなわち、組織の行っている行為が、「収益事業」に該当すれば課税されるし、「収益事業」に該当しなければ課税されないことになります。
暴力団のビジネスの中でも、薬物や銃器の売買などのビジネスは「収益事業」であるため課税されるものの、
組織を維持するために配下の暴力団員から集める「上納金」は町内会会費と線引きが曖昧で、これまで課税が難しいとされてきました。
税務当局が法人税課税するためには、上納金が「収益事業に該当する」ことを立証する必要がありました。

 

2.「収益を目的としているか否か」がカギ

「収益事業に該当するか否かについて」もう一歩考えてみます。
町内会の延長として、非営利型の一般社団法人XX会の会費は、法人税課税されないこととなっていますが、
一方、日本マクドナルドのようなフランチャイズは法人税課税されています。
そして、フランチャイズ収入とするか、非課税の会費とするかについては、税法上グレーゾーンであり明確な基準がありません。
税法では、活動する側の意図や、支払う側の意図等を総合的に考えて、収益事業に該当するか否かを検討することとなっています(法人税法4,5,7条)。
例えば、フランチャイズビジネスは、コンテンツを作り上げ、広告費をかけ、将来的に「収益を生み出すこと」を意図して行っていますが、
町内の美化を目的とした町内会費は「収益を生み出すこと」を意図して行っていません。

 

3.暴力団は、自警団かフランチャイズか・・・

では、暴力団の上納金についてはどう解釈すればいいか?自警団(非営利)とフランチャイズ(営利)を対比して考えて見ます。
暴力団は、フランチャイズの収益の根源である「ブランド」を恫喝等々によって維持しており、
企業や個人は、恐怖からの解放など何らかの見返りを期待してお金を支払っているはずです。
ここを切り取ると、フランチャイズビジネスに似ており、営利性があり、「収益課税」が可能に思えますが、
暴力団側としては、
「俺たちは日本の、地域の自警団なんだよ。俺たちがいなかったら中国、韓国、ロシアとか、攻めてきて大変だよ」
「守ってるの!日本を!地域を!」
「行政不備を補完しているのが俺たちだ」
などと非営利性を主張され、
上納金ビジネスが「収益事業」に該当する ということを立証することは困難
だと思われます。

 

4.入り方を変えることで対応

フランチャイズ認定ができれば法人税課税ができますが、それが出来なければ難しい。
そこで、今回、税務当局サイドが取った手法は、法人税としての課税を諦め、
そもそもの入り口を変えて、「カネを貰ったら課税」という原則を組長個人にあてはめて課税
に向かったカタチです。
【なぜ 指定暴力団・工藤会に所得税が課せられたのか?】1_2015.06.17
記事にあるような、親族などの名義の口座に上納金の一部を送金したことを突き止め、私的に使ったということであれば、
「組」という存在はカタチだけで、実態としては個人にお金が流れていたんでしょということで、
個人所得税の方で課税を図れるということになります。
税法の中でも、法人税から所得税に税目を切り替えたカタチになります。

 

5.今後の暴力団側の想定される反論

今後の想定される反論は、
これは某テレビ局のアナウンサーと同じく「贈与ではなく借りていただけだ」とする貸付金とする主張だと思います。
また、微妙なラインとして、なぜ贈与税ではなく所得税としての立件だったのか?という点も気になるところです。

 

6.今後の他の非営利団体への波及

1つの事例が作られると、これが他の団体にも影響を及ぼすのが税務の世界ですが、
気になるのは、今まで課税がスルーされていた町内会や自警団等の「任意団体」にも課税される余地が出てくるのではないか?
という点です。
同様の論理で行くならば、
非営利型の団体でも、その会費を会長の個人的な飲食に使った場合には、所得税が課税されるはずです。
当然と言えば当然ですが、曖昧なものをなくし、自分に厳しく・・・自分の脇を引き締めることが大事なのかもしれません。
最後までお読み頂きありがとうございました。
ご参考になれば幸いです。

 


1.暴力団のみかじめ料(上納金)にも税金をかける時代
2.むしろ、今までかからなかった(課税できなかった)のは、「収益事業」の線引きが曖昧だったから
3.警察と税務当局がタッグを組んで、新たな「課税論理」を作成し、課税した
4.今後の影響は、他の非営利団体にも同様の課税論理により課税強化できる可能性は出てくる

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