2015年08月19日 (水)

九州電力 川内原発の再稼動反対には・・・現実的な解決方法

九州電力 川内原子力発電所の再稼動は、世論では賛否両論があります。
桜島の噴火警戒レベル引き上げのニュース(※1)があり、原子力政策は岐路に立っているはずです。
なぜ、反対が強くても強硬再稼動しているのでしょうか?
再稼動反対派の主張を通すためには何が必要でしょうか?
(2015/08/19更新)

1.九州電力の最近の損益と財務状況(※2)

まずは九州電力の最近の損益状況と財務状況を確認します。

「4期連続▲2,000億円規模の営業CF赤字、震災以後 赤字補填のため1.3兆円もの借入増

損益

1_PL
2011年の震災以前は安定的に300~400億円の純利益を稼いでいましたが、
震災以後の2012年度▲1,500億円、2013年度▲3,500億円の純損失(赤字)、
電力値上げをするも2014/15年度▲1,000億円規模の純損失(赤字)と大幅赤字が継続しています。

財務状況

2_CF
本業の稼ぎを示す営業CFは、震災以後2012~15年度4期連続▲2,000億円規模の資金流出、4期累計▲8,000億円規模の資金流出 という大変厳しい状況が続いています。
また維持設備投資もあり、4期連続 2,000~4,000億円規模の財務出動を行っています。
原発停止以後、赤字補填のため、震災後 約1.3兆円もの借入増になっているのです。
3_BS

2.九州電力の懐事情としては、再稼動以外は取り得ない・・・

巨額赤字及び巨額借入調達の現状からわかることは、 九州電力は原発を再稼動させないと、持たないという現実でした。
九州電力の経営陣としては、一刻も早く原発再稼動して、 震災以前の水準の300~400億円の利益を稼げていた 安定的な利益水準に戻したいのです。
これは、九州電力の株主だけでなく、財務出動により貸付を行っている銀行団も同じ気持ちのはずです。
経済合理性の観点からは、再稼動をしないという選択は取れないのです。

3.再稼動反対の株主提案は圧倒的多数で否決・・・

総株主議決権の3%以上の議決権を6カ月以前より有する株主は、株主提案をすることができます。
実は2015年6月25日に株主総会が開催され、
株主提案として会社の基本ルールである「定款」の変更決議が提案されていました(※3)。
決議結果
定款変更の内容は、「再稼動の可否について」でした(4号~10号議案)。
定款変更には2/3(66.7%)の賛成票数が必要ですが、 結果、賛成票は10%にも満たない 圧倒的反対を受け、再稼動へ進むこととなりました。
原発再稼動反対・・・噴火が起り、制御不能になる「可能性」があるという状況だけでは、 赤字を垂れ流し 株主価値を棄損する提案には賛成が集まらない・・・
これが現状でした。
新聞ではあまり報道されていませんでしたが・・・

4.再稼動反対へ変えるには・・・

株主総会決議がされたのは2015年6月25日でしたが、 2015年8月になり桜島の噴火警戒レベルの引き上げのニュースが流れました。
NHK
このニュースを持ってしても、まだ再稼動は続けるのでしょうか?
事故が起り、東京電力と同じく制御不能となってしまった場合には、株主価値は現在の株価どころではなく、ゼロになってしまう可能性が高いのです。
また、銀行としてもいずれも回収不能処理に内部処理が必要になります。

この決断をできるのは内部の人では無理です。
銀行の中の人は決して「悪い人」ではないでしょう。
ただ単に現状では、取締役は株主背任で訴えられたり(会社法960条)、 銀行団などの債権者から「これ以上貸さない」と言われることを恐れているだけなのでしょう。
銀行としても背後に株主がいるので、同様に理由で「英断」はできないのです。

再稼動をしないという選択は、経済合理性の判断から、内部では出来ない決断です。
じゃあどうするのか? 全ての株式を買い取ればいいじゃないですか。

5.全ての株式を買い取るには・・・7,733億円必要

2015年8月18日現在の九州電力の時価総額は、7,733億円です。
これだけのお金を出せれば、定款を変更するどころか、原発を廃炉にすることもできます。
定款変更だけであれば、2/3 (5,155億円)で済むわけですが、現状の赤字垂れ流し財務出動のしわ寄せは銀行団に行くことになります。
株式所有割合の中で金融機関の所有割合は定款変更2/3を拒める40%を保有しています(※4)。

すると、定款変更では無理です。全ての株式を買い取る必要があります。
現実には、買い進める中で、銀行団が「売れない」とか他の思惑で買占めが進む、 さらには買収後の損益をさらに垂れ流しをすることにどう対処するのか?など問題は山積みであり、 実際には、現在の時価総額7,733億円では済まないでしょう。

ただ、少なく見積もっても7,700億円もの資本力が必要なのです。
株主構成1
株主構成2

6.再稼動反対と経済的なジレンマ

単に、電力会社のゲート前で「反対」と言っても、それが実行に移されるのは難しいのです。
これを解決できるのは果たして・・・

 

最後までお読み頂きありがとうございました。

参考リンク先

※1:http://www3.nhk.or.jp/ne…/html/20150815/k10010190981000.html
※2:https://valuationmatrix.com/companies/9508
※3:http://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0047/8531/p2simr8v.pdf
※4:http://www.kyuden.co.jp/ir_stock_basic.html

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