2013年06月25日 (火)

招き猫専門店にみるニッチ戦略|経営分析

中国にちょっと信じられない専門店があります。
「招き猫だけ」を販売しているお店です。

招き猫だけを販売しているのです。
それ以外のものは一切ありません。
類似縁起グッズのパワーストーンが置いてあるわけではありません。
さまざまな招き猫が置いてあります。
・ブレスレットに招き猫がついているもの、
・携帯ストラップ型の招き猫、
・巨大な招き猫まで、各種取り揃えてあります。

驚きました。
こんなお店がビジネスとして成り立つんだろうか・・・と。
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しかも、そのお店は人気ショッピングモールの中の人通りの多い場所にあります。
日本でいうと、渋谷109の地下1階、地下鉄駅からモールに直結している入口近くのイメージです。
ショッピングモールへの入り口ですから、導線上、人通りはかなり多いです。
賃料も高いでしょう。。。
すぐに潰れるだろうと思いました。

・・・
しかしです。
想定外に、多くの人が立ち寄っているのです。
しかも、来客者に対する購入者の比率も高いです。

これはどういうことだろうか?要因を検討してみました。
1.固定費を低く抑えることができるビジネスモデルであること
2.縁起もの又は贈りものであるため、高い利益率が見込めること(中国人の面子の文化)
3.競合が少なく、価格競争に陥らないこと

 

1.固定費を低く抑えることができるビジネスモデルであること

①小さいスペース

この招き猫のお店、渋谷109の地下1階に相当する良い場所にはあるのですが、店舗面積は小さいです。
5坪(16㎡)程度しかありません。
ここに出店できる業種を考えると・・・限られます。
キオスク程度なら可能ですが、調理をする飲食店は、まず無理です。
鯛焼き屋さんやたこ焼き屋さんも厳しいです。
こんな他の業種は見向きもしないデットスペースであるため、人通りは多くとも賃料は安いはずです。

②少ない店員数

また、この招き猫屋は店員が2人しかいません。時間帯によっては1人です。
よく言われるのが、中国では1つのことだけをする単能工のため、とにかく従業員を多く配置しています。
日本の3倍ぐらいの人を配置しています。
一方、招き猫屋は業務が「モノを配置する」、「レジをする」だけですので、2人で十分足りるのです。
売上が上がらないタイミングもあるでしょうから、徹底的に固定費は抑えています。
このように、賃料や人件費を抑えて、売上が少なくとも利益を出せるような構造にしています。

 

2.縁起もの又は送りものであるため、高い利益率が見込めること(中国人の面子の文化)

100元と120元の招き猫がありました。
大きさは少しだけ違います。
招き猫は、粘土を型にはめて、焼き上げ、色付けをする という製品構造であるため、
直径10cmの招き猫と、直径12cmの招き猫では、製造コストはあまり変わりません。
単価は20%変わりますが、コストはあんまり変わらないので、単価の高い120元の招き猫は、利益率がかなり高いのです。

さて、ゲンを担ぐ時に、自分のお店に飾るために購入する時、120元の大きい招き猫と、ちょっと小さい100元の招き猫、どちらを買うでしょうか?
「商売始めるけど、ここは節約して小さくても良いや・・・」とせっかくゲンを担ぐ人が考えるでしょうか?
招き猫屋は、高ければ御利益がありそうで、魅力的に見える!という「高い方がむしろ売れる」性質があるため、高い招き猫の方が売れます。
また、結婚式での贈り物に結構多く送られるそうですが、この時に、中国人は「少し小さい招き猫でもいいや・・・」とは考えないのでしょう。
金銭感覚にうるさい中国人でも、「面子」がかかっている時は、ズバッお金を支払います。
結婚式の贈り物用に、巨大で花嫁猫と花婿猫が付いてるものが1,988元(26,000円)で売られています。
このような「ご祝儀価格」の性質もあり、単価を落とさなくてよい⇒利益率が高いというのはビジネス上かなりポイント高いです。
利益率(=付加価値率)を20%、ぽーっんと上げるのは普通のビジネスではかなり難しいです。

 

3.競合が少なく、価格競争に陥らないこと

デフレ社会日本では牛丼値引き合戦にあるように、需要があると供給も増えるのが普通の市場ですが、
招き猫の需要はある程度あるとは言っても、そんなに沢山の重要は、ありません。
そもそも、人通りが多いニッチスペースというのは多くはありません。
なので、招き猫屋の隣に招き猫屋ができて、顧客を奪い合うなんてこともありません。
今後、ウェブ販売によってニッチ市場は崩される可能性はありますが、
ニッチスペースができた場所で、ニッチな人が、競合がでない範囲で商売をしています。

 

4.まとめ

「ニッチ戦略」というと、とにかく人と違ったことをしよう!と思って突っ走ってしまい、ニッチ過ぎるがゆえに、実はそこには市場がなかった・・・なんてことが往々にしてありそうですが、
「ニッチ」が戦略として「成り立つ」には、希少性(変わったこと)であることに加えて、高単価や低いオペレーションコストなど、それ以外の「仕組み」も必要だと感じました。
招き猫の話では、
1.「ご祝儀価格」の側面があるため、利益率が高いこと
2.大きなスペースが不要であるため、まさに「ニッチ」の語源である「隙間」で販売できる⇒賃料が低い
3.縁起の良いシーズン(お正月や春節前など)だけ限定でオープン!⇒固定費を抑えられる事業モデルも可能
4.低価格商品(20元のストラップなど)もあり、自分用(女子)の商品もそろえている⇒小さい売上を取りこぼさない
5.オペレーションが単純(並べて売るだけ)なので、人員が少なくとも問題ない⇒人件費が低い
などの要素が絡み合っているということです。

なるほど、案外やるやん「招き猫専門店」・・・
というお話でした。

ちなみに僕は、クリスマスのプレゼント用に15センチ四方の割と大きい貯金箱型ですが、88元(約1,100円)を買いました。
「88」元というのは、縁起がいい値段なので(8を漢字で書くと「八」、「末広がり」と言われ、中国では縁起がいい数字とされてます)、敢えて「これを値切ろう」という気も起きません!
ここまで計算しています!!
僕のレジの前の人は200元支払っていたりと、単価も高かったです。

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中国人の同僚に聞きました。
「招き猫専門店とかいう、不思議なお店があるんですが・・・」

実は中国では、贈り物に招き猫というのは一般的なようです。
中国では、風水や縁起を大切にします。

おぉ、なるほど、こういう文化的な背景からある程度市場があるのね。
そして、市場があるというだけでは成り立ちませんが、
実はビジネスとして成り立つようです。

こちらからは以上です。

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