2016年02月06日 (土)

経費になる慰安旅行/社員旅行の境界線(過去の判例から)

お客様の会社でXX周年記念の、海外旅行を企画されていました。
そこで、「経費で大丈夫ですか?」というご相談がありまして、「経費OKな社員旅行の境界線」を調べてみました。
(最終更新:2014/11/03)


【まとめ】
1.社員旅行は4泊5日以内で、従業員の半分以上を連れて行けば経費になる
2.毎年旅行に行っている場合は、税務調査で槍玉に上がりやすい
3.経費になるが、「不相当に高額な旅行」は否認される
4.「不相当に高額」の基準は曖昧だが、1人あたり10万円以下であれば安全ライン
5.しかし、「5年ぶりの旅行で、年間に割ると10万円以下と高額ではない」という主張は否定された判例がある
6.議論の遡上に上がってしまうのは20万円以上


 

1. 社員旅行は4泊5日以内で、従業員の半分以上を連れて行けば経費になる

社員旅行は基本的に、福利厚生費として「経費処理」できます(注1)。
ただし、制限なく経費を認めてしまうと、
「社長と、奥さん(役員)で家族旅行に行ったものを福利厚生費にする」などの私的濫用につながってしまうため、一定の制限を設けています。
具体的には、税務署ルールでは、
要件①: 4泊5日以内であること
要件②:全従業員の50%以上の参加であること
というルールを出しています(注2)。

2.ただし、「不相当に高額なものは駄目」・・・基準は10万円/人

宿泊日数要件や、人数要件であれば、要件を簡単に満たせるのですが、
加えて、「社会通念上」旅費が高すぎるものは経費ダメという曖昧な税務措置があります。
基準があいまいなので、過去の判例を検索してみました。

1
金額基準では、
No1の平成3年の18万円のタイ旅行は税務上セーフだが、
No4の平成22年の24万円のマカオ旅行は税務上アウトでした。

No4の平成22年の判例では、課税庁側から、外部の客観的なデータが提出され、これが採用されています。
外部客観的なデータのソースは、
・・・官公庁及び民間企業からの依頼により賃金、労務管理、労働問題、経営管理等に関する各種調査研究の受託業務等を行っている法人であるE社が、会員企業に対して行った社内行事と余暇・レク活動等に関するアンケート調査の結果・・・とのことです。
これによると、金額は下記のようになっています。
【一般的な海外旅行に要する費用等の額と会社負担金額等について】
2
つまり、調査結果でも、10万円ぐらいまでの海外旅行だったら、税務上通るということになります。

また、明確に言われているわけではありませんが、社会一般では10万円以下であれば、税務上通るということが言われています。
これは、国税庁HPの判定サンプル記事に10万円が経費になるという記述があるということが根拠になっているようです。
3
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2603.htm

3.数年ぶりの旅行で、一年当たりに均せば10万円以下という主張は通るのか?

判例の中で気になる文言を見つけました。
平成22年のNo4は、納税者側から「5年ぶりの旅行で、1年あたりは48,260円だ」という主張がされていますが、
これは否認されています。
「1年あたりに慣らせば高くない」という主張は認められませんでした。

4.毎年毎年の旅行は、もはや福利厚生の域を超えているため、否認対象となりやすい

No2 平成10年 の判例は、平成5年~7年と3年連続して旅行に
No3 平成14年 の判例は、平成8年~10年と3年連続して旅行に行っています(いずれも1人あたり10万円超)。
このことから分かることは、
毎年毎年連続しているものは、税務調査で議論の対象になりやすいということです(3年というのは調査対象期間の関係かと推測されます。)。
毎年旅行を繰り返しているというのは「福利厚生としてやりすぎだ」という当局の考え方が伺えます。

5.税務調査で議論の遡上に上がるのはどうも20万円以上らしい・・・

改めて判例No1~4を見て見ると、
税務調査で争いになるのはどうも一人あたり20万円以上ということが分かってきます。
10万円以下はセーフ、しかし、20万円以上は厳しそうだ・・・

最後までお読み頂きありがとうございました。
目安のひとつにしていただければ幸いです。

参考リンク先

注1:所得税基本通達36-30
(課税しない経済的利益……使用者が負担するレクリエーションの費用)
使用者が役員又は使用人のレクリエーションのために社会通念上一般的に行われていると認められる会食、旅行、演芸会、運動会等の行事の費用を負担することにより、これらの行事に参加した役員又は使用人が受ける経済的利益については、使用者が、当該行事に参加しなかった役員又は使用人(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を除く。)に対しその参加に代えて金銭を支給する場合又は役員だけを対象として当該行事の費用を負担する場合を除き、課税しなくて差し支えない。
(注)上記の行事に参加しなかった者(使用者の業務の必要に基づき参加できなかった者を含む。)に支給する金銭については、給与等として課税することに留意する。

注2:【所得税基本通達36-30(課税しない経済的利益・・・・・使用者が負担するレクリエーションの費用)の運用について(法令解釈通達)】
標記通達のうち使用者が、役員又は使用人(以下「従業員等」という。)のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、下記により取り扱うこととされたい。
(趣旨)
慰安旅行に参加したことにより受ける経済的利益の課税上の取扱いの明確化を図ったものである。

使用者が、従業員等のレクリエーションのために行う旅行の費用を負担することにより、これらの旅行に参加した従業員等が受ける経済的利益については、当該旅行の企画立案、主催者、旅行の目的・規模・行程、従業員等の参加割合・使用者及び参加従業員等の負担額及び負担割合などを総合的に勘案して実態に即した処理を行うこととするが、次のいずれの要件も満たしている場合には、原則として課税しなくて差し支えないものとする。
(1) 当該旅行に要する期間が4泊5日(目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数による。)以内のものであること。
(2) 当該旅行に参加する従業員等の数が全従業員等(工場、支店等で行う場合には、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること。
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/shotoku/gensen/880525/01.htm

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